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導入事例 公益財団法人鉄道総合技術研究所様 公益財団法人鉄道総合技術研究所様

レールなど鉄道の軌道の保守を効率化するシステムを1990年代から開発してきた、公益財団法人鉄道総合技術研究所様。2000年代初頭に数理計画法パッケージNumerical Optimizerをエンジンに採用し、「軌道保守計画支援システム」をリリース。 現在もたゆまぬ進化を続けている。 >印刷用 PDF

Interview
軌道保守の効率化を促進する5つのシステムを実現

軌道保守計画支援システムの概要を教えてください。

三和様 軌道とは、レールやまくらぎ、それを支えるバラスト(砂利)でできた道床などで構成されています。 軌道は、安全で正確な鉄道運行の土台であるため、適切な保守が欠かせません。 この保守作業は一般的に終電から始発までの限られた時間内に専用車両などを使って行うため、効率的に作業を行うための綿密なプランニングが必要となります。 これまでは、担当エリアの軌道の状態や作業条件を熟知した現場の担当者がその計画立案を行っていましたが、こうした熟練技術者の確保が難しくなる将来においても同様の計画立案ができるよう、また少ない保守作業で品質の高い軌道状態を維持できるよう、その支援ツールを最適化計算の技術を活用して開発してきました。 現在、主に5つの保守作業に関する計画システムを開発済みであり、軌道保守計画支援システムはそれらの総称です。

どのような最適化を行うのでしょうか。

三和様 軌道変位保守計画システムの例をご紹介します。 軌道では、列車の繰り返しの通過によってレールの位置や高さにズレや歪みが出てきます。 それを修正するためにMTT(マルチプル・タイ・タンパー)という専用車両が配備されていますが、作業できる時間が短いため、修正できるのは一晩で数百m〜2kmの距離しかなく、しかも台数が限られています。 一方で、軌道のズレや歪みは線区内の各所で進行するため、自ずと保守の優先順位も出てきます。 限られた専用車両を、いかに効率的に運用して、保守の優先順位が高い場所で作業にあたらせるか、システムではそのスケジューリングを行っています。
同様に、レール表面の凹凸を削るレール削正車の運用(レール削正計画システム)や、バラストを交換する機械の運用(道床交換計画システム)、既存の木製のまくらぎのコンクリート製まくらぎへの変更(PCまくらぎ化計画システム)、レール等の状態診断と5年スパンでの保守計画立案(軌道状態評価システム)などがあります。 これらシステムのエンジンとして、Numerical Optimizerを使用しています。

軌道を保守するさまざまな専用車両

2001年頃からNumerical Optimizerをお使いと聞きました。

三和様 この分野の研究は1990年代から行ってきました。 当時、自作のプログラムによる開発を進めていましたが、最適解を得るまでの時間が長く、新たな制約条件の追加にはプログラムを書き換える必要があるなどの問題がありました。 そこで汎用の最適化ツールを探したのですが、当時主流だった海外プロダクトは対応に時間を要するなどの課題があったのに対して、日本製で性能も十分なNumerical Optimizerに高い関心を持ちました。 Numerical Optimizerの開発元であるNTTデータ数理システムでは、ソリューション開発も可能なため、計画システムにおいてユーザーが計画条件を設定する際のGUIを最適化エンジンと連携させながら一体的に開発できることなどにもメリットを感じました。 それが2001年くらいのことです。 特にNumerical Optimizerの開発スタッフが情熱を持って年々性能を向上していく姿に大きな将来性を感じたことも採用理由のひとつでした。 2003年に最初のシステムをリリースし、現在は5システムでNumerical Optimizerを利用していますが、このように複数のシステムで共用できるのは汎用エンジンの強みだといえます。

これまでの開発でのトピックスをお聞かせください。

三和様 2005年にWCSPという機能がNumerical Optimizerに追加されました。 これが軌道保守計画支援システムにとっては、大きなステップアップとなりました。 例えばMTTの運用では、移動距離の上限や運用できる期間など、さまざまな制約があります。 それら制約を満たしながら線区全体の軌道状態が最も良くなるようなスケジュールをNumerical Optimizerを使って作成します。 しかし、システムを使う中で、いつまでにこの保守を完了しておきたいなどといった現場からの要求が多く出てきてしまいました。 この結果、考慮すべき制約が増えすぎて解が得られなくなる、つまりスケジュールの作成が不可能という事態に陥ってしまったのです。 何もアウトプットがないと、担当者はどうすることもできません。 ところが、ちょうどそのとき、WCSPがリリースされました。 このWCSPは、制約違反があっても、できるだけ高い優先順位を満たしながら何らかの答えを出してくれます。 同時に、満たせなかった制約のリストも出してくれます。 担当者は両者の結果を見て、制約の重要度を考えながら手直しすることで、より実用的なスケジュールを立てられるようになりました。 いわば、多数の制約があってもとりあえず叩き台を作ってくれる、“注文の多い人”の要望にも応えられるようになったわけで、軌道保守計画支援システムにとっては、大きな進化だったといえます。

鉄道運行の安全・安心のために進化し続ける

軌道保守計画支援システムの実績をお聞かせください。

三和様 軌道保守計画支援システムは現在、JR5社に導入され、利用されています。 また、民間の鉄道会社に対しては、このシステムを使ったスケジュール作成のサービスを提供しています。 今まで現場担当者の感性でやってきたことをモデルに代行させるため、その結果に違和感を抱かれることがよくありました。 現場の勘やノウハウは大事にしたいので、それに沿うようにモデルを修正してケアしてきましたが、その都度、NTTデータ数理システムと議論を重ね、システムをブラッシュアップすることを繰り返してきました。 その結果「これならいいんじゃないかな」と担当者から言われたとき、このシステムの成長を実感しました。

今後、どのような展開をお考えですか。

三和様 近年、軌道データがより緻密に採取できるようになりました。 以前は専用の車両で在来線だと年4回程度の計測でしたが、今は毎日運行している営業車両に計測装置を取り付け、毎日データ採取できるようになっています。 こうしたビッグデータの活用により、1年後に軌道の形状が保守の必要な状態に至る確率はどれくらいかといった将来予測も可能になっています。 そういった結果も取り入れて、より緻密なスケジュール作成を行いたいと考えています。 軌道の保守には、まだまだ課題が山積しています。 軌道を修繕するには依然として多くの人手がかかっており、今後の労働者人口の減少を考えると、保線業務の省力化は急務といえます。 また、保守全体の観点から見直すべき作業も数多くあります。 それらをすべて最適化し、より少ない人員で最適な保守が行えるようにすることは、安全・安心な鉄道運行を今後も維持するために欠かせません。 とても大きく困難なテーマですが、Numerical Optimizerの力を借りながら、一歩一歩、目標に近づいていきたいと思っています。

Numerical Optimizerをエンジンとする軌道変位保守計画システムの運用例

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