Chap8 コンジョイント分析

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8.1 コンジョイント分析の目的と分析の流れ8.2 直交表8.3 分析の目的を定め,データを用意する8.4 分析8.5 結果と考察

8.1 コンジョイント分析の目的と分析の流れ

コンジョイント分析の目的は、商品の組み合わせを直交表を用い、できるだけ少ない組み合わせのアンケートを作成・実施し、その結果から最大の情報を得る.少ない商品の組み合わせから、消費者に好まれる要因を探ることである. 新商品を作る場合、どの機能を組み入れることが消費者にとって好ましいのかを事前に知る必要がある。事前に消費者の選好構造を把握することで、現在の市場に受け入れられる商品の開発に繋がることが考えられるからである。

携帯電話を購入する場合,車を購入する場合など,様々な状況で消費者はどの製品を購買するかを決定し ている.消費者には,それぞれ商品を選ぶ基準があるはずである.商品は,機能,デザイン,サービスなどの要因から成り立っている.企業は,製品開発時に,どのような製品が消費者に好まれるかを把握することが重要になる.消費者が何を求めているのか,どのような製品であれば,購買につながるのかを把握することができれば,新製品開発に役に立つ. コンジョイント分析を用いることで,どの要因が購買に影響をもたらすのかを把握し,商品の構成を決定しやすくなる.具体的には,新商品の提案,マーケットシェアの予測などに用いることができる.

コンジョイントの分析では,機能,デザイン,サービスなどの要因を属性という.また属性の具体的な設定を水準という. 例えば,携帯電話の機能を例にとると,ワンセグ,音楽再生,ラジオなどが水準ということになる.

8.2 直交表

直交表とは,できるだけ少ない組み合わせで最大の情報を得るための手法です. 商品の組み合わせ数が多くなると,アンケート被験者に対し,負担が多くかかってしまう. この状況を改善するために,直交表というものを利用する.直交表を用いることで,アンケート数を減らすこ とができる.

携帯電話の開発という例題の下,以下話を進めていくことにする. 携帯電話の構成をデザイン,重さ,機能,価格から成り立っているとする. そこで,携帯電話に取り入れる機能,デザイン(携帯電話の形状など)そして,端末の価格について,案をい くつも考える.

とする. この場合,全ての組み合わせの数は,54(2×3×3×3)通りあるが,直交表を用いることで, 18個の組み合わせについてアンケートを実施することで,最大の情報を得ることができることになる.

直交表を作成するために,[統計]→[計画]→[直交要因計画]を選択する.

[Orthogonal Array Design] の[Levels]の部分に分析で用いるアンケート項目の水準数を入力する. 例では,形2水準,重さ3水準,機能3水準,デザイン3水準なので,「2,3,3,3」と入力する.そして,OKを選択する.

すると,下図の直交表が作成される.ここで,分析で用いる水準項目を入力する.

8.3 分析の目的の決定と,データの準備

分析を行うために,アンケートを実施して,データを収集する.コンジョイント分析でのデータの収集方法は

が挙げられ,データ収集に用いる計測の基準は が挙げられる.順位法とは,直交表で作成した組み合わせ(以下コンジョイントカード)について,商品を買いたい順番に順位をつけてもらう方法である. 評価法とは,コンジョイントカードに買いたいと思うなら10点,どちらでもないなら5点,買いたくないと思うなら0点と点数をつけてもらう方法. 評定尺度法は,コンジョイントカードについて,5段階評価を行う方法である.

今回の分析例では,以下のような要因,水準を設け,アンケート(評価法)を実施し,その平均点を得点として入力した.

8.4 分析

次に,このアンケート結果を用いて,重回帰分析を行う. 重回帰分析を行うために,下記のようにデータを置き換える.

ここでは、weight,fnc,designがそれぞれ3水準なので,重回帰分析を実行できるように, weight1では,「軽い」を1,それ以外を0, weight2では,「重い」を1,それ以外を0, fnc1では,「ワンセグ」を1,それ以外を0, fnc2では,「ラジオ」を1,それ以外を0, design1では,「折りたたみ」を1,それ以外を0, design2では,「ストレート」を1,それ以外を0にした.

作成したデータで回帰分析を行い,どの機能やデザインを取り入れれば,消費者に好まれるのか,その組み合わせ を求める.

ここでは,ステップワイズ法を用いる.ステップワイズ法は,t値が大きいものを削除し, 最良の回帰式を示してくれる.

Models ScopeのUpper Formulaに"score~."と入力する.

        *** Linear Model ***

Call: lm(formula = score ~ form + weight1 + weight2 + fnc1 + fnc2, data = conjoint2,
        na.action = na.exclude)
Residuals:
   Min      1Q   Median     3Q Max 
 -0.35 -0.1819 -0.01944 0.1333 0.5

Coefficients:
               Value Std. Error  t value Pr(>|t|) 
(Intercept)   3.1833   0.1613    19.7352   0.0000
       form   0.2111   0.1317     1.6029   0.1349
    weight1   0.5667   0.1613     3.5131   0.0043
    weight2  -0.5833   0.1613    -3.6164   0.0035
       fnc1   0.4000   0.1613     2.4798   0.0290
       fnc2  -0.2667   0.1613    -1.6532   0.1242

Residual standard error: 0.2794 on 12 degrees of freedom
Multiple R-Squared: 0.8549 
F-statistic: 14.14 on 5 and 12 degrees of freedom, the p-value is 0.0001121 


                

算出結果より,designは含まないモデルを求めることができた. 結果から分かることは,formは角型,weightは軽い,fncはワンセグの機能が付いている携帯電話 を消費者が好むことが分かる.

ここで,form,weight,fncの間には,交互作用が無いのかをチェックする.交互作用というのは ある属性の水準と,もう一つのある属性の水準が組み合わせになった場合に, 特に好まれるであろうものができることである.そこで,その交互作用のチェックを行う. [統計]→[計画]→[交互作用]のチェックを選択する.

VariablesのDependentはscoreを選択し,回帰式にform,weightとfncが含まれたので,この3つの間に交互作用がないのかをチェックする.OKを選択し,表示された結果を下記に示す.

上記の3つのグラフが表示されるが,この3つからは特に交互作用は見られない.