3. 固定費の表現#
3.1. 説明#
3.1.1. 問題背景#
固定費 (fixed cost) とは総費用 \(TotalCost\) のうち, 生産量 \(x\) の変化に関わりなく生じる費用 \(C\) をいう. これを想定した数式表現を次に与える.
(3.7)#\[\begin{split}TotalCost :=
\begin{cases}
0 & (x=0), \\
A\cdot x + C & (x>0)
\end{cases}\end{split}\]
これは固定費に関する単純化したモデルであり,内容としては次を想定している.
ある製品を \(x\) 単位生産するものとする.
このとき,\(1\) 単位あたりの生産に要する費用係数は \(A\) である.
これに加えて,もしその製品が少しでも生産されるならば,
立ち上げの為の初期費用 \(C\) も固定費として発生する.
3.1.2. 定式化#
数理最適化の定式化で問題となるのは,\(x\) に応じた場合分けの線形な表現である. 場合分けの表現は,インジケータ変数 \(z\in\{0,1\}\) を導入した以下の式を考えればよい.
(3.8)#\[\begin{split}& \mathrm{Optimize:}~ TotalCost = A x + C z \\
& \mathrm{subject~to:}~ \\
& 0 \leq x \leq M\cdot z\end{split}\]
ここで \(M\) は \(x\) が取り得ることがない十分大きなパラメータであり,Big M のことである. 上記の書き換えによって,インジケータ変数 \(z\) の値に応じて確かに次のことが表現できている.
\(z = 0\) ならば,\(x\) の値は \(0\) に固定され,\(TotalCost=0\) である.
\(z = 1\) ならば,\(x\) は Big M のために 自由変数 となって \(0\) ではない値を取ることができて,\(TotalCost = A x + C\) である.
なおこの定式化技法は目的関数の最大化・最小化とは無関係のため, 目的関数でない単なる式表現の場合にも用いることができる.