今年度も多数のご応募誠にありがとうございました。学生研究奨励賞の結果(上位)は以下の通りとなりました。
最優秀賞、優秀賞の研究につきましては受賞者による研究説明動画を配信しています。ぜひご視聴ください。

最優秀賞

社会実装に向けた遅延率と優先状況に基づく適応的・確率的な交通信号制御

東海大学 情報理工学部 コンピュータ応用工学科
川﨑 勝紀 様
発表論文
内容
昨今、日本では交通渋滞が経済や環境に深刻な影響を及ぼしています。また、「働き方改革関連法」による労働時間の制限強化により、トラック運転者の稼働時間が減少し、全国の配送能力も低下しています。このため、交通流の改善や車両スループットの向上を図るために、交通最適化の導入が急務です。
本研究では、交通最適化を通じて配送車や公共交通機関の移動をスムーズにすることを目的とし、マルチエージェントシミュレーションを用いて、現実的な社会実装が可能な信号制御の効果を検証しました。その結果、配送遅延率に基づく優先順位の決定や、交通状況を考慮した確率モデルによる制御の可能性が示されただけでなく、汎用性と安定性を兼ね備えた交通最適化手法も提案されました。
選評
本研究は、先行研究との差分や改善のモチベーションが明確であり、特に社会実装を意識した問題点を技術的に解決する方法を提案している点が優れています。 既存の車両と信号機の双方向通信を前提とした信号制御手法を一方向に改良し、優先権の付与によってハイパーパラメータに依存しない手法を確立した点は非常に独創的です。 また、社会実装に向けた制約として優先権の拒否を考慮している点も高く評価できます。
実験結果は必ずしも既存手法を上回るものではありませんが、パラメータチューニングなしの結果としては良好な成績が得られています。 配送力の限界問題の解決は社会的に大きな意義を持つ取り組みです。手法自体にも今後改善の余地があることから、さらなる発展を期待しています。

優秀賞

ベイジアンネットワークによる従業員エンゲージメント向上の要因分析

中央大学 理工学研究科
池ヶ谷 健太 様
発表論文
内容
企業の働き方改革は、従来、従業員の働きやすさに目的意識が置かれてきましたが、コロナ禍を経て、従業員の働きがいに目的意識を置く変化がみられます。働きがいと相互関係にある従業員エンゲージメントについてより高い解像度で理解することで、働きがい向上のための課題や施策の検討が可能になると考えられます。
本研究では、従業員エンゲージメントの因果構造の仮説検定を行い、ベイジアンネットワークを用いてエンゲージメント向上の主要因を推定しました。その主要因に対して企業の特徴分析を行うことで、エンゲージメントの高い企業と低い企業の違いや、離職率や営業利益との関係も差があることが分かりました。
選評
従業員エンゲージメントに関する本研究は、現状分析から課題設定、仮説構築、解析手法の選定まで論理的かつ明確に示され、従来研究との差分も丁寧に説明されています。 また、エンゲージメント向上の主要因推定に留まらず、企業の離職率と営業利益との関連分析に試みており、独自性が際立つ内容であると思いました。
課題として挙げられている因果関係の事前設定については、真の因果関係を明らかにすることは困難であるため、本研究はむしろ堅実なアプローチだと考えています。 今後、新たなデータ取得や実証実験により検証を進めることで、適切な科学的探求のプロセスを踏み、従業員エンゲージメント向上のメカニズムを明らかにしていけると信じています。 今後も堅実な分析を積み重ね、様々な問題や課題に切り込んでいってほしいと思います。

サプライヤ選別 vs 協働:脱炭素時代におけるメーカーの在り方に関する試作モデル開発と検証

東京理科大学 創域理工学部 経営システム工学科
成田 柊介 様
東京理科大学 創域理工学研究科 経営システム工学専攻
纐纈 潤大 様
発表論文
内容
近年、脱炭素化が重要視される中で、企業は自社の取り組みだけでなく、サプライチェーン全体の排出削減が求められています。特に大規模メーカーは、サプライヤとの協力や選別を通じてその方策を模索しています。
本研究では、メーカーのサプライヤ選別・協働戦略が消費者や社会に与える影響を、マルチエージェントシミュレーションを用いて解明しました。その結果、主要メーカーの傾向が市場に影響を及ぼすことや、企業間の取引ルールによって投資効率に大きな差が生じる可能性があることが示唆されました。
選評
本研究は、サプライチェーン全体の脱炭素化において、メーカーのサプライヤ選別および協働が与える影響を分析・比較している点が独創的です。 サプライヤの選別および協働を適切にモデル化して表現していることも高く評価されます。 具体的には、サプライヤの選定と協働という二つのアプローチをマルチエージェントシミュレーションを通じて定量化し、企業間取引が市場や社会全体に及ぼす影響を明確に示した点が新鮮です。
さらに、実際の企業活動への応用を視野に入れたモデル構築と改善提案により、さらなる実践的な応用も期待されます。 特に、協働型戦略が長期的には社会的利益をもたらす一方で、投資効率に課題があることを指摘し、その克服策を提案している点は非常に興味深く、実務にも貢献できる重要な視点だと思います。

秀作

過密空港の着陸復行による遅延に対応したバッファの最適配置

東海大学 情報理工学部 コンピュータ応用工学科
衛本 航 様、横山 隼 様
発表論文

自律分散型サプライチェーンにおける発注者の意思決定の違いがサプライチェーンの経済性に及ぼす影響の調査

東京理科大学 創域理工学部 経営システム工学科
嶋村 光騎 様、小野 百合香 様
発表論文

佳作

テキストマイニングによる薬局のGoogleレビューの 評点とクチコミ情報を用いた地域区分別特徴分析

横浜薬科大学 薬学部 臨床薬学科
相川 くるみ 様
発表論文

新アトラクション導入時のテーマパークにおける優先搭乗パスの評価・検討

早稲田大学 大学院 創造理工学研究科 経営システム工学専攻
石井 友梨 様
発表論文

マルチエージェントシミュレーションを活用した電動キックボードのユーザー満足度改善を実現する戦略の検討

早稲田大学大学院 創造理工学研究科 経営システム工学専攻
上木 翔太 様
発表論文

垂直輸送におけるバッチ化の有効性について~現場の熟練作業者によるエレベーター管理方法~

東京理科大学 創域理工学部 経営システム工学科
近藤 聡汰 様
発表論文

テキストマイニングによる 口コミデータを用いた顧客満足度の分析

東京理科大学 経営学部 経営学科
佐藤 佑泉 様
発表論文

最大リグレット最小化0-1整数計画問題に対するコア選択法

静岡大学大学院 総合科学技術研究科 工学専攻
長谷川 和樹 様
発表論文

道路の災害リスクの変化を考慮した交通流制御手法の検討

東京理科大学 創域理工学部 経営システム工学科
船越 皓太 様
発表論文

宿泊施設評価データを用いた宿泊施設の受賞要因分析

中央大学大学院 理工学研究科 ビジネスデータサイエンス専攻
三村 崇彰 様
発表論文

オーバーツーリズムにおける公共交通機関の混雑の分散

芝浦工業大学 理工学研究科
村上 美梨香 様、ゴ ユウキ 様、鈴木 直人 様、堀 佳奈恵 様
発表論文