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都市計画・社会システム

都市計画・社会システムに関するシミュレーションや数理最適化の事例をご紹介します。

都市計画・社会システム検討へのシミュレーション・数理最適化技術の活用

都市計画・社会システムの検討では、そこに暮らす人々への影響が甚大なため、実際の規模感で実験してみるというアプローチをとることが困難です。このような状況ではシミュレーションや数理最適化の技術が力を発揮します。コンピュータ上でのシミュレーションによって仮説の立案や検証を行ったり、その仮説ルールに現実の状況を取り入れて定式化し数理最適化により施策の具体化を行うことで、多くの人と課題や目指す世界を共有して、事業を推進できるようになります。

交通計画

道路交通網の混雑や渋滞は常に社会問題となってきました。事故の発生や渋滞を避けようと、わざわざ迂回した先がさらに渋滞する…といったことも道路交通では度々発生してしまい、運転者や歩行者はもちろんのこと、その他の交通網にも悪影響を与えかねません。シミュレーションを活用すれば、右折路や複数の信号機の制御がどのように道路交通に影響を与えるかを分析することでき、最適な信号制御による渋滞解消を図ることが可能になります。このように、想定できる問題が多様で、且つ車やヒトといった「一定の行動目的を持った個体」の動きを考える際には、ルールベースでアプローチすることができるエージェントベースシミュレーション(ABS)の強みを活かすことができます。

実際にシミュレーションをしてみましょう。今回の設定する交差点は実際に存在する幹線道路を参考にモデルにしています。 現実に近しいモデルをコンピューター上に表現することで、低コスト、且つローリスクでの分析が可能となります。

このようにシミュレーションは、低いコスト、リスクで、複数回実行できるという特性から、現実での実施が難しい施策の検証などに長けています。

適用例

人流シミュレーション

イベント会場近くの歩道や、駅・ショッピングモールのような大規模施設のように人が集まる空間では、 各人がそれぞれの目的地に向かう事で、人の流れが起こります。この時、下記のような問題が発生します。

  • 混雑が発生し、目的地に着くまでに時間がかかる
  • 目的地で行列が発生する
  • イベント会場において、事故が起こる
  • 自然災害時の逃げ遅れ

そこで、シミュレーションで人の流れを分析し、事前に施策を検討しておく事は非常に重要です。 具体的な施策には、非常灯やサインシステムを適切に配置し、人の流れをスムーズにする事や、警備員を適切に配置し、事故の発生を防ぐ事等が考えられます。

実際にイベント終了時の人の流れをシミュレーションしてみます。下の動画は神宮球場でのイベントが終了し、イベント参加者が駅に向かう様子をシミュレーションしています。

このモデルでは、背景地図上に描画したネットワーク上をエージェントが移動し、混雑が推移する様子をシミュレーションします。エージェントは中央のスタート地点(神宮球場)から発生し、付近の駅の いずれかに向かって移動します。各エージェントは目的地まで最短経路を志向して、確率的に経路を選択するため、同じ目的地でも複数の経路で向かう様子が見られます。また、モデルに下のような細かい条件を化す事で、現実を精緻に再現しています。

  • 人口密度に応じて歩行速度を決定するモデル(Greenberg モデル)を採用して、混雑時の速度低下を表現
  • 一部エッジについては周期的に侵入可能/不可能の切り替え、ナイター終了後の交通整理の様子を再現
  • エージェントの経路選択時に、過度に混雑している道路は避ける仕組みにより、混雑が自然に分散

さらに広域な新宿区周辺の人流シミュレーションをしている様子が下の動画です。歩行者の移動の様子をシミュレーションし、人口密度をヒートマップで可視化しています。

弊社の汎用シミュレーションシステム S4 Simulation System ではこのような人流シミュレーションを効率的に作成できるように、地図エディタ等の便利な機能やエージェント行動のフレームワーク等を多数用意しています。

適用例

感染症シミュレーション

感染症のモデルとしては古くからKermack-McKendrick(1927)のSIRモデルがよく用いられます。非感染者(S)が感染者に接触すると接触時間に比例した確率で感染(I)します。また、感染者(I)は、感染後の経過時間に比例した確率で治癒(R)します。また、一度感染すると、抗体ができるため再感染はしません。

このような人を感染者・非感染者・治癒者の群として扱う(常)微分方程式ベースのモデルがある一方で、エージェントベースシミュレーション(ABS)で個々人のふるまいを考慮したモデルを考えることも可能です。各個人の学校(職場)、自宅の往復などを加味した上で、感染の広がりをシミュレーションします。個体ごとの行動の違い、他の人との接触などがモデル上で表現されます。行動制限、接触制限、感染者隔離などの具体的な感染予防策を自然にモデルに反映できるため、施策の検討・評価に役立てることができます。

適用例

施設配置

人口の減少や変動、都市の再開発などに応じて、公的施設をどのように配置・統廃合するべきかは重要な課題です。コストや利便性などの複数の観点があり、行政としても悩みどころではないでしょうか。このような複雑な要件のもとでの配置計画の支援を、数理最適化で行うことができます。

適用例