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NTTデータ数理システムのデータサイエンスツールで学生が企業経営のグリーン化を後押し

~ものづくりの視点から循環型社会をシミュレーション分析~

2022年02月08日

ニュースリリース

株式会社NTTデータ数理システム

リリースノートのPDF版はこちらから


 株式会社NTTデータ数理システム(本社:東京都新宿区、代表取締役社長: 箱守 聰、以下、NTTデータ数理システム)は、2021年度の「NTTデータ数理システム学生研究奨励賞」(以下、学生研究奨励賞)を決定いたしました。

 学生研究奨励賞は、当社が学生の研究支援を目的として2003年度に設立した公募型の研究奨励賞で、優れた数理科学領域の研究成果に対して表彰を実施するものです。また、応募された学生には当社で開発・販売しているデータサイエンスツールが無償で貸し出され、研究に活用いただくことができます。2021年度は73件の応募があり、数多くの優れた研究成果を表彰対象として選定いたしました。

 最優秀賞には東京理科大学 纐纈 潤大さんの研究成果となる「持続可能な生産システムの安定性を考慮した潜在在庫の管理方法に関する一考察」が選ばれました。持続可能な社会への実現に向け、企業のものづくりに着目し、販売した製品を回収、リサイクル品として販売する循環型の生産システムをシミュレーションで分析しました。これによって、これまで循環型の生産システムで課題となっていた、製品の生産量や回収量、在庫量の不確実性を解消するための方法がモデル化され、経済的利益の創出だけでなく、昨今、企業に求められている経営のグリーン化を後押しするような示唆が得られました。

 また、特別優秀賞には中央大学大学院片桐 優帆さんの研究成果「ヘアサロンにおける来店間隔と店販商品購買の同時分析」を選定いたしました。ヘアサロンの顧客データを分析し、顧客ごとの来店頻度、来店間隔と来店時に購買される商品の関係から施策を提案される、応用性の高い研究をご報告いただきました。

 これらの受賞研究成果は2/10(木)に開催されるNTTデータ数理システム主催の【数理システムアカデミックコンファレンスFY2021】にて講演・発表されます。

 NTTデータ数理システムでは、今後もDX社会の担い手となる人材育成に貢献できるよう、本取り組みを継続していきます。


背景およびNTTデータ数理システム学生研究奨励賞について

 昨今、さまざまな業種・業界において事業戦略の実現に向けたデジタル・トランスフォーメーションへの取り組みが一層加速しており、その根幹となるデータサイエンス領域の取り組みの重要性が高まっています。また、その担い手となる数理科学に長けた人材の育成についても同様に重要性が高まっています。

 このような中、NTTデータ数理システムでは学生の学術研究の支援と発表の場の提供を目的として2003年度より「NTTデータ数理システム学生研究奨励賞」を設立し、毎年、公募および表彰を実施しています。

 本取り組みは公募型の研究奨励賞となり、応募いただいた学生(大学院生、大学生)には、当社で開発・販売しているデータサイエンス(データマイニング、テキストマイニング、統計解析、シミュレーション、数理最適化)のソフトウェアが無償で貸し出されます。学生は貸与されたソフトウェアを使用した研究を行い、12月に研究成果を提出します。

 優秀な成績を収められた学生には、最優秀賞、特別優秀賞、優秀賞、秀作、佳作等の各賞が授与され、最優秀賞を受賞した学生には、数理システムアカデミックコンファレンス(NTTデータ数理システム主催)で発表頂いています。

 2021年度は73件の応募があり、最優秀賞、特別優秀賞、優秀賞等をはじめ数多くの優れた研究成果を表彰対象として選定いたしました。

学生研究奨励賞:
https://www.msi.co.jp/solution/stuaward.html

2021年度の主な受賞研究成果について

■最優秀賞

受賞者:
東京理科大学 纐纈 潤大さん

タイトル:
持続可能な生産システムの安定性を考慮した潜在在庫の管理方法に関する一考察

研究概要:
 戦後の深刻なもの不足から脱却するために、大量生産、大量消費、大量廃棄の時代が続きましたが、公害の発生や環境問題への注目が高まり、必要なものを必要な量だけ生産できる効率的なものづくりの時代へ移行してきました。そして今、世界的な需要の増加に伴った天然資源の枯渇や、環境問題が顕在化するようになってきました。企業にも環境に配慮した生産、消費、廃棄を目指した経営のグリーン化と経済的利益の創出の両立が求められています。

 その実現方法の一つとして、販売した製品を回収・検査・洗浄・分解し、リサイクル品(再製造品)として販売する循環型の生産システムがあります。しかし、循環型の生産システムは、回収の質、量、タイミングが不確実です。回収量が多いと廃棄コストや在庫コストがかかり、さらにタイミングが悪いと、在庫不足による機会損失が発生するため、多くの企業では採用されていません。もしも、このようなサプライチェーンの不安定性を解消し、経済性と両立できる方法がわかれば、経営のグリーン化や循環型社会の実現にもつながります。

 研究では、循環型の生産システムをシミュレーションモデルにモデル化し、NTTデータ数理システムの汎用シミュレーションシステム S4 Simulation System(HP:https://www.msi.co.jp/s4/) を使用して実験することで、循環型の生産システムを安定して運用できる方法がないか分析しました。

 その結果、リサイクル品の販売量に制限を設けることで、潜在在庫(顧客が使用中の製品)を適切に管理すれば、システムの安定性と経済性を両立できるという示唆が得られました。

図.循環型の生産システム(提出資料より抜粋)

図.循環型の生産システム(提出資料より抜粋)

図.シミュレーション結果(提出資料より抜粋)

図.シミュレーション結果(提出資料より抜粋)

  • シミュレーションとは
     現実世界をコンピューター上に構築し、さまざまな条件で実験、検証を行うことで、業務の効率化や最適な施策を検討することができます。適用事例は製造業、配送・物流、コールセンター、社会課題までさまざまです。この研究では、製品の製造、販売、回収、再製造(リサイクル)といった循環型の生産システムをシミュレーションモデルでモデル化し、リサイクル品の販売量を変化させる実験をシミュレーションで行いました。 

■特別優秀賞

受賞者:
中央大学大学院 片桐 優帆さん

タイトル:
ヘアサロンにおける来店間隔と店販商品購買の同時分析

研究概要:
 ヘアサロンは、カットやカラーといった施術提供が主な商材です。しかし、施術は時間を伴うサービスのため、人的資源が制約となり、一定以上の売り上げ増加を見込むことは難しく、売り上げ拡大のためには時間を伴わない、店頭商品(シャンプーやヘアケア製品)の販売促進が重要になります。本研究は店頭商品の販売促進のため、商品と来店間隔との関係性を、性別年代などと共に明らかにする、「来店間隔と商品購買の同時モデル」を構築することを目指しました。このモデルは、顧客ごとのk週後の来店確率、購買確率を同時予測できるため、顧客への最適なレコメンドが可能になる、商品売上数の見積が可能になり、在庫管理に応用できる、というメリットがあります。

 策定したモデルに対し、データを用いてNTTデータ数理システムのデータ分析ツールVisual Mining Studio(現:Alkano、HP: https://www.msi.co.jp/alkano/)をベースとして分析を行うことにより、来店頻度、施術の種類、購買商品の関係性を発見し、期間を指定した顧客ごとの来店確率、商品購買確率の予測が可能となることが明らかになりました。

図.来店間隔・購買生起の同時モデル(提出資料より抜粋)

図.来店間隔・購買生起の同時モデル(提出資料より抜粋)

  • 生存時間解析とは、生物の死や機械システムの故障など、1つの事象(event、イベント)が発生するまでの予想される期間を分析する統計手法です。この研究では、来店時から、次の来店時間を予測するモデル(来店間隔モデル)に応用されており、顧客属性や前回来店時の施術などがそのモデルに影響を与える説明変数として扱いました。

二項ロジットモデルとは、二項(正負など)が起こる確率を説明変数から予測する統計手法です。この研究では、ある来店時に対象カテゴリの商品を買う確率を予測する購買生起モデルに応用されました。

今後について

 最優秀賞、特別優秀賞の受賞者には、2/10(木)に開催されるNTTデータ数理システム主催の【数理システムアカデミックコンファレンスFY2021】にて研究成果を発表していただきます。

数理システムアカデミックコンファレンス FY2021(オンライン開催)

 当社製品をご利用頂いている各学術研究機関の研究者によるご講演及び、2021年度の学生研究奨励賞で優秀な成績を収められた方に研究成果を発表していただきます。
開催日時:2022年2月10日(木) 10:00~18:00
詳細・お申込み:https://www.msi.co.jp/academicconf/index.html

本件に関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータ数理システム
営業部
嶋田
Tel: 03-3358-6681: Mail: sales@ml.msi.co.jp