数理最適化を用いて業務改善・業務改革を実現する

昨今の変化が激しい社会において、ビジネスの継続・発展のために、企業では様々な場面で意思決定を強いられています。
最適な意思決定の実現に向けた有用な技術として、数理最適化が昨今注目を集め始めています。

数理最適化問題とは、一定のルール(制約条件)の範囲内で、最も良い(目的関数)答え(変数)を見つける問題として表現されます。

サプライチェーンを例にとると、

  • 原材料をいかに効率良く調達するか
  • 工場でいかに効率良く生産するか
  • 製品等のモノをいかに効率良く輸配送するか

などに数理最適化を適用することにより、現状業務の改善や改革に繋がることが期待されます。

当社は、これまで 30 年余りにわたり数理最適化ビジネスを展開しています。
具体的には、汎用数理最適化ソルバ Nuorium Optimizer の自社開発及び、様々な業界の実務課題に対する数理最適化を用いた課題解決を実施しています。

今後、実務課題は益々大規模複雑化することが予想されます。

さきに挙げたサプライチェーンの例では、原材料調達、工場での生産、製品の配送、これらの個別最適だけでなく、調達・製造・流通・販売の全体最適に迫る必要があり、大規模な実務課題に対して数理最適化を適用していくことが求められます。

また後述の適用課題で示すように、これからの世の中の仕組みやニーズにマッチする複雑な実務課題の解決にも、数理最適化の適用が期待されます。

当社としては、Nuorium Optimizer の性能向上(参考1)や機能増強(参考2)を継続すると共に、大規模複雑化する数理最適化課題に今後もアプローチし続ける所存です。

(参考1)並列計算技術を用いた性能向上例:並列分枝限定法における擬コストの共有方法に関する発表
Yasumi Ishibashi, Koichi Fujii
”Pseudocost sharing in NuOpt”
IFORS 2021


(参考2) 機能増強例:二次計画問題用単体法に関する発表
Shoji Shimizu, Koichi Fujii, Julian Hall
”Steepest-Edge Simplex Algorithms for Quadratic Programming”
ICIAM 2023 TOKYO

業務改善・業務改革に向けた数理最適化の適用課題を紹介します。

物流業界における数理最適化の適用

昨今、物流業界では「物流2024年問題」が取り沙汰されています。
これは、2024年4月から適用の、自動車運転業務に対する時間外労働時間の上限規制に伴い、トラック輸送能力が不足し、モノが運べなくなるリスクが生じるというものです。

トラックなどで日々モノを運ぶ際には、
  • ドライバーの労働基準法遵守
  • 積載容量の遵守
  • 配達時間指定の遵守
  • 移動距離/移動時間 の短縮に繋がる効率の良い配送ルート選択
  • 効率の良い配車組み(配車台数削減)
などの条件を考慮しながら計画を立案する必要があります。

このような配送計画を数理最適化問題として表すことにより、定義した各種制約条件(配達時間指定など)を遵守しつつ、定義した目的関数(配車組みや配送ルート)に対して良い結果を得ることができます。

「物流2024年問題」により、これまで以上に複雑な条件や不確実性が高い状況での配送が強いられるものと予想されます。
配送計画を数理最適化により立案するニーズが今後益々高まっていくものと考えられます。

(参考3) 配送計画問題の事例発表
西井匠, 古川道信, 樫尾博, 重田隆弘, 本多正和, 今井義弥, 加藤由里子
”ローリー車による液化天然ガス(LNG)販売事業のロジスティクス最適化の実現”
日本オペレーションズ・リサーチ学会 機関誌 2019 年 64 巻 12 号

DX 推進における数理最適化の適用

製造業を中心に、情報のデジタル化、DX 推進が謳われています。
しかし、製造業をはじめとした日本企業の多くでは未だ、DX 推進がうまく進んでいないのが実状です。

このような状況下において、
  • 製造業:工場内の生産計画、生産スケジューリング、人員配置
  • 小売業・サービス業:シフトスケジューリング(勤務表作成)、人員配置
に対し、熟練の計画作成担当者が「カン・コツ」に基づいて計画立案している企業が数多く存在しています。

効率の良い(上手い)計画立案をしている熟練者のノウハウを抽出して数理最適化を適用することにより、次に挙げる効果へと繋げることができます。
  • 熟練者に頼り切ることのない計画立案実現へ
  • 企業内の単一現場ではなく全現場の標準化・効率化実現へ

デジタル化した情報を活用して数理最適化を業務に適用することにより、企業にとっての更なる付加価値創出に繋げることが可能となります。
このように、数理最適化は企業内の DX 推進にとって有用な技術となります。

(参考4) シフトスケジューリングの事例発表
多田明功, 寺岡洋一, 吉沼由紀夫
”株式会社ビックカメラ様への「店舗シフト作成システム」の適用”
スケジューリング・シンポジウム2020講演論文集

Green における数理最適化の適用

数理最適化の適用により、様々な場面での Green(環境負荷軽減)に寄与することができます。

物流における配送計画では、数理最適化による効率の良い配車組み・配送ルート導出により、従来よりも CO2 排出量削減に繋がる結果が得られます。

需要家のエネルギー需要を賄うエネルギー供給設備の最適運転計画にも、しばしば数理最適化が適用されています。
再生可能エネルギーである太陽光発電や、蓄電池、コージェネレーションシステム(省エネで高効率なエネルギー供給可能な設備)などからなる設備構成に対して、数理最適化で最適運転計画を導出することにより、CO2 排出量削減に寄与する結果に繋がります。

数理最適化適用の効果としては、一般的にコスト最小化や売上最大化で語られることが多いのですが、このように CO2 排出量削減による環境負荷軽減にも、数理最適化技術は貢献しています。

(参考5) 発電計画問題の事例発表
本田 敦夫, 手塚 孔一郎, 岡村 智仁, 河本 薫, 清水 翔司, 原田 耕平, 田辺 隆人, 白川 達也, 高橋 智洋
”全国電源運用最適化シミュレーションモデルの開発”
電気学会論文誌B 2018 年 138 巻 11 号