デマンドレスポンス#
読み: でまんどれすぽんす
英名: Demand Response
電力エネルギーの需要・供給関係において,需要側が供給側の供給状況に応答して需要量を変化させること,またはその仕組みのこと.時間帯ごとに異なる電気料金を設定し安価な時間に需要を誘導する「料金単価型」と,節電の協力に奨励金をだすことで供給側として望ましい需要に誘導する「インセンティブ型」に分類される.
なお,アメリカ合衆国エネルギー省の論文 [1] では,次のように定義された. 電力需要者が時間ごとに変化する電気料金に応答して, もしくは,電力卸価格が高騰した時や電気の安定供給が深刻な危機にある時に節電を促す奨励金制度に応答して,平時の電力消費パターンを変更すること.
デマンドレスポンスが求められる背景にはピークシフト・ピークカットの必要性がある. 電力会社はピーク需要時に供給力不足が見込まれた場合,新たに発電所や蓄電施設を造らなければならないが, ピークシフト・ピークカットが実現できれば,発電所などを増やすことなく電力システムの安定性を確保できる.
情報通信技術の発達により散在する需要家の節電を集約化することが可能になった. すなわちデマンドレスポンスは擬似的なエネルギー資源を生み出す. 自身の減収を招く節電を電力会社が奨励金を出してまで促す理由は,節電が投資する価値のある資源という地位を得たためである. 節電は電力市場電源調達ポートフォリオの構成要素の 1 つなのだ.
デマンドレスポンスプログラムには,需要逼迫時に大幅な割高料金を課すものや供給量に制限を課すものがある. こうしたプランでは供給側からの通信に応じて自動的に適正な電気消費量にする最適化・機械学習機能を搭載した IoT 機器が有用となる.
総じてデマンドレスポンスには全体最適の傾向がある. ピークシフト・ピークカットによる電力システムの安定化は,CO2 排出量の削減,発電機器の故障率の低減, 原油や LNG の輸入額の減少を引き起こし, 長期的には電力会社のみならず需要者の利益に繋がるだろう. そのためには需要側への教育や,公平な制度設計が重要となる.
関連
参考文献
U.S. Benefits of Demand Response in Electricity Markets and Recommendations for Achieving Them - A Report to the United States Congress Pursant to Section 1252 of the Energy Policy Act of 2005. Technical Report, US Department of Energy, 2006. URL: https://eta.lbl.gov/publications/benefits-demand-response-electricity.
伊藤剛, editor. 進化する電力システム 市場フロンティアとビジネスモデル革新. 東洋経済新報社, 2012.